住宅ローンの贈与税と非課税制度|親からの資金援助、夫婦間の贈与などケース別に回避策も解説
住宅ローンを組む際、ご両親や配偶者からの資金援助が贈与税にどのように影響するかを心配する方も少なくありません。
知らずに贈与税の課税対象となり、負担が発生しないようにするため、贈与税の非課税の仕組みや回避方法を正しく理解しておくことが大切です。
この記事では、福井・石川で資金計画の段階からご家族の家づくりをサポートしている「ノークホームズ」が、以下の項目をわかりやすく解説します。
コラムのポイント |
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目次
贈与税とは
贈与税とは、他人から無償で財産を譲り受けた際に課される税金のことです。
ご両親や親族から住宅取得資金や住宅ローン返済資金などの援助を受ける際も、贈与税の対象となる場合があります。
贈与税の課税対象
贈与税の課税対象となるのは、原則として全ての財産です。
- 現金
- 有価証券(株式や投資信託)
- 不動産
- その他の財産(美術品、車、貴金属など、価値があるとみなされるもの)
贈与税の計算方法
贈与税の課税方式には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があります。
【暦年課税の場合】
贈与税は、「贈与税 = (受け取った財産の価値 - 基礎控除額)× 税率 - 控除額」の式で計算されます。
税率は、贈与額に応じて以下のように異なります。
贈与額(基礎控除後) | 税率 | 控除額 |
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〜200万円 | 10% | 0円 |
200万円〜400万円 | 15% | 10万円 |
400万円〜600万円 | 20% | 30万円 |
600万円〜1,000万円 | 30% | 90万円 |
1,000万円〜1,500万円 | 40% | 190万円 |
1,500万円〜3,000,万円 | 45% | 265万円 |
3,000万円〜4,500万円 | 50% | 415万円 |
4,500万円〜 | 55% | 640万円 |
<参照>国税庁:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
この計算で適用されるのは、「贈与を受けた年の1月1日時点で、20歳以上の子ども(または孫)が親(または祖父母)から贈与を受けた場合」です。
贈与した人が兄弟姉妹であったり、受贈者が20歳未満の場合は税率が異なるため、注意が必要です。
(例)30歳の息子がご両親から300万円の資金援助を受けた場合
(300万円-110万円)× 10% - 0円 = 19万円(贈与税)
【相続時精算課税の場合】
相続時精算課税は、受け取った財産の合計額から2,500万円(特別控除額)を差し引いた額に課される税金です。
税率は一律20%です。
(例)3,000万円の贈与を受けた場合
(3,000万円 - 2,500万円)× 20% = 100万円 (贈与税)
新築住宅の納税についてはこちらの記事で確認できます。
>新築住宅の固定資産税納付はいつから|課税開始時期と負担を軽減するためのポイントも解説
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住宅ローンと贈与税の関係性
住宅ローンを組む際、本来は借り入れる本人の収入や返済能力に基づいて審査が行われます。
しかし、購入代金の全額を借りることができるケースは少ないため、一部をご両親や配偶者から資金援助を受けることがよくあります。
その資金提供が「贈与」とみなされると、贈与税が課される場合があります。
主なケースは以下のとおりです。
- 住宅ローンを組む際に、頭金をご両親や配偶者が負担する場合
- 住宅ローン契約者以外の人と共有名義で登記をする場合
- 住宅ローンの返済を契約者以外の人が肩代わりする場合
住宅ローンを組む際に、頭金をご両親や配偶者が負担する場合
住宅を購入する際、契約者以外の人が頭金を負担した場合、その金額が贈与税の対象になる可能性があります。
例えば、住宅ローンを組む契約者がご両親や配偶者から頭金の援助を受け、契約者自身が不動産の持分を100%登記した場合、税務署はその援助を「贈与」とみなします。
本来、その金額分の所有権を負担した人に登記する必要があるためです。
注文住宅の住宅ローンの借入時の流れはこちらの記事で確認できます。
>注文住宅の住宅ローンの流れ|仮審査・本審査・つなぎ融資のタイミング、本審査に落ちた場合の対処法など解説
住宅ローン契約者以外の人と共有名義で登記をする場合
住宅を購入する際、出資額と登記の持分割合が一致しないと、贈与とみなされる場合があります。
(例)5000万円の住宅を購入する場合
夫が3,000万円、妻が2,000万円負担した場合、適切な持分割合は、「夫が3/5、妻が2/5」です。
しかし、夫婦が平等に「2分の1ずつ」で登記した場合、妻は実際には2,000万円しか負担していないのに、2500万円分(5000万円の半分)の所有権を得ることになります。
この差額の500万円分が夫から妻への贈与とみなされ、贈与税の対象となる可能性があります。
住宅ローンの返済を契約者以外の人が肩代わりする場合
住宅ローンの契約者は、本来自身で返済する義務を負っています。
しかし、住宅ローンの返済を他者が代わりに行う場合は、個人の財産に対する贈与とみなされ、贈与税の課税対象となります。
以下の場合は、贈与とみなされる可能性があります。
- 毎月の返済を定期的に肩代わりしている
- 返済の出所が明確に他者からの提供と特定できる
- 返済能力がない契約者に代わって計画的に返済が行われている
住宅ローンの一括返済については、こちらの記事で確認できます。
>住宅ローンの一括返済にデメリットはないか|損をしないタイミングと親から借りる場合の注意点も
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住宅購入・住宅ローン返済で贈与税を回避する方法~非課税制度も解説
住宅ローンを組む際や返済時に、ご両親や配偶者からの資金援助を受ける場合の具体的な回避方法について解説します。
- 住宅取得資金贈与の非課税制度を活用する
- 金銭消費貸借契約を結ぶ
- 暦年贈与の非課税枠を活用する
- 負担付贈与を活用する
- 相続時精算課税制度を活用する
住宅取得資金贈与の非課税制度を活用する
住宅購入のために、ご両親や祖父母から資金援助を受ける場合、「住宅取得資金贈与の非課税制度」を活用することで、最大1,000万円まで贈与税を免除できます。
住宅取得資金贈与の非課税制度の概要は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
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適用期限 | 2024年1月1日から2026年12月31日までの贈与が対象 |
非課税限度額 | ・省エネ住宅:1,000万円 ・一般住宅:500万円 |
適用条件 | ・贈与者は受贈者の直系尊属(親や祖父母など)であること。 ・受贈者は贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること。 ・受贈者の年間所得が2,000万円以下であること。 ・取得する住宅の床面積が40㎡以上240㎡以下であること。 ・贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得し、居住すること。 |
対象となる住宅 | ・省エネ住宅の基準を満たした新築住宅 ・省エネ住宅の基準を満たした中古・増築住宅 |
<参考>国税庁:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
住宅取得資金贈与の非課税制度を活用する際には、以下の点に注意が必要です。
- 妻の親から贈与を受ける場合は、基本的には非課税制度は適用されません(養子縁組をしている場合は適用可能です)
- 贈与税の納税は不要ですが、申告は必要です。
- 「不動産取得税」や「登録免許税」は支払う必要があります。
金銭消費貸借契約を結ぶ
住宅購入や住宅ローン返済のための資金援助を「贈与」ではなく「借入」にし、金銭消費貸借契約を結ぶことで、贈与税を回避できます。
ただし、以下のケースでは「贈与」とみなされる可能性があります。
- 明らかに返済不能な金額を借りる
- 利子がない、あるいは著しく金利が低い
- 返済期限がない
- 金銭消費貸借契約書がない
上記を防ぐためにも、金銭消費貸借契約書に金利や返済期限などを明記する必要があります。
また、金銭消費貸借契約書を正しく保管し、返済の記録は金融機関の口座などでを残しておくことも重要です。
暦年贈与の非課税枠を活用する
贈与税には非課税枠があり、1月1日から12月31日までの1年間に贈与される金額が110万円以下であれば、贈与税の課税対象にはなりません。
大きな金額の贈与は難しいですが、毎年の住宅ローン返済額以内の資金援助であれば、贈与税の負担なく援助を受けることができます。
ただし、毎年定期的に一定の金額を贈与すると、当初から総額の贈与の意思があったものとみなされ課税される場合があるため、毎年親子で贈与額を決めて都度贈与契約書を作成し、贈与をすることをおすすめします。
負担付贈与を活用する
負担付贈与は、贈与と同時に贈与を受けた者が贈与者に対して一定の義務を負うことを条件とすることで、贈与税を軽減できる場合があります。
(例)
- 住宅ローンが残っている住宅を贈与し、受贈者にローンの返済を負担してもらう
- 現金を贈与する代わりに、介護や家事の支援を受ける
- 土地を贈与する代わりに、一部のスペースを贈与者が使用する権利を得る
- 一括返済する妻分の住宅ローンに相当する妻の持分を夫の持分として移転する など
負担付贈与は、贈与を受けた金額から債務の負担額を差し引きした金額に対して贈与税が課税されるため、税額の軽減効果が異なることを理解しておきましょう。
住宅ローンのペアローンを検討している方は、こちらで確認できます。
>住宅ローン控除を上限まで使えるペアローンシミュレーション|デメリット(手数料2倍など)も簡単解説
相続時精算課税制度を活用する
一度に多額の贈与をしたい場合には、相続時精算課税制度の活用も有効です。
しかし、相続時精算課税制度は「贈与税を非課税の対象」にできても、「相続税の課税対象」となる点には注意が必要です。
贈与を行う際には、将来の相続税負担を考慮したうえで、適切な計画を立てることが重要です。
福井・石川で注文住宅をご検討中の方は「ノークホームズ」へご相談ください。
贈与税や住宅ローンに関するご相談から資金計画まで、経験豊富なスタッフが丁寧にサポートいたします。
贈与税回避に失敗しないための手続きのコツ
贈与税の申告は、以下の書類を準備し、贈与を受けた年の翌年3月15日までに行う必要があります。
書類に不備があると、贈与税が課されるだけでなく、税務署から追加の調査が入る可能性もあります。
【必要書類】
- 贈与契約書
- 資金贈与の振込が確認できる銀行の振込明細
- 必要に応じて、住宅ローンの契約書
- 源泉徴収票または所得証明書(受贈者の所得確認用)
- 住民票(居住確認用) など
【手続きの流れ】
手続きの流れ |
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1. 贈与契約書を作成する:贈与する金額、贈与の目的(住宅取得資金など)、贈与日を記載 ↓ 2. 贈与税申告書を作成する ↓ 3. 税務署に申告・提出する ↓ 4. 税務署で確認を受ける:提出書類が適正であれば、非課税枠の適用を認められます |
詳しい申告方法や必要書類については、国税庁のウェブサイトで確認してください。
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まとめ
この記事では、「住宅取得資金贈与の非課税制度」や「金銭消費貸借契約」「暦年贈与の非課税枠」などを活用し、贈与税を回避しながら計画的に資金援助を受ける方法をご紹介しました。
ご両親や配偶者からの資金援助は、住宅購入やローン返済をスムーズに進めるための大きな助けとなります。
住宅購入やローン返済に関する税制を正しく理解し、不明点がある場合は、専門家に相談することが大切です。
この記事が夢のマイホームを実現するお役に立てれば幸いです。