耐震等級3は必須なのか|「能登半島地震」クラスの地震に備える住宅の耐震性能事情
石川県で初めての震度7を観測した能登半島地震によって、8,000棟以上の住宅が全壊しました。
阪神・淡路大震災以降、震度7クラスの地震は7回観測されているため、住宅新築にあたって、耐震等級3を確保するかどうかを検討している方が多いのではないでしょうか。
今回は、地震に強い家づくりのエキスパートである福井・石川の工務店「ノークホームズ」が、能登半島地震で建物の全壊が多く発生した理由に触れながら、耐震等級3の家づくりについて詳しく解説します。
目次
能登半島地震における建物被害の状況
2024年1月1日に発生した能登半島地震による建物被害は、以下のとおりです。
- 全壊:8,795棟
- 半壊:18,761棟
- 一部破損:82,706棟
新潟県・富山県・石川県で、甚大な被害をもたらしました。
こちらの記事で、熊本地震の住宅全壊事例を確認できます。
>耐震等級2・3の建物は十分な耐震性なのか|震度7の全壊事例(熊本地震)、地震に強い家のつくり方を解説
能登半島地震で多くの建物被害が発生した理由
能登半島地震で建物の全壊が数多く発生した主な理由は、以下のとおりです。
- キラーパルス
- 液状化現象
- 耐震基準を満たしていない住宅
それぞれ、わかりやすく解説します。
キラーパルス
地震の周期には「短い周期の揺れ」「長い周期の揺れ」があり、1〜2秒ほどの周期の短い振動がキラーパルスです。
木造住宅・低層の家屋はキラーパルスの影響を受けやすいとされていて、能登半島地震では古い木造住宅を中心に全壊の被害が見られたことから、キラーパルスによる影響が大きかったのではないかと推測されています。
液状化現象
液状化現象とは、地震の振動によって地盤が液体のようになる現象です。
能登半島地震では、河北潟を中心に液状化現象が発生しました。
地盤が液状化すると、次のような被害が発生します。
- 建物が傾く・沈む
- 道路に亀裂が入る
- 埋没物が浮き上がる
- 上下水が使えなくなる など
いずれもその地域で暮らす方々に大きな影響をもたらすものばかりで、建物も深刻な被害を受けます。
耐震基準を満たしていない住宅
能登半島地震の主な被災地である輪島市・珠洲市は耐震化率※が約50%と低い地域で、住宅被害が深刻でした。
※「耐震化率」とは、総住宅数に占める耐震基準を満たしている住宅の割合です。
福井・石川で地震に強い家をご希望の方は、ノークホームズへお問い合わせください。
耐震等級3の住宅を、標準仕様で提供しております。
能登半島地震では新耐震基準の住宅も全壊
能登半島地震では、大地震に耐えられるイメージのある「新耐震基準」で建築された住宅も、多数全壊しました。
国土交通省が専門委員会を立ち上げて原因を調査し、以下2点が関係していると考えられています。
- 家屋の劣化が進んでいた
- 複数回の地震でダメージが蓄積していた
新耐震基準は1981年6月1日に施行され、40年以上が経過しています。
築40年以上の住宅は、駆体などさまざまな箇所の劣化により、大地震に十分に耐えられる性能を保持していなかったと想定できます。
また、新耐震基準は震度7クラスの地震に1度だけ耐えられことを想定して定められた基準で、過去の地震によるダメージが蓄積していた住宅が全壊したと考えられています。
住宅の耐震基準とは|旧耐震基準・新耐震基準の違い
耐震基準とは、建築基準法によって定められた「一定の強さの地震に耐えられる住宅を建設するための、最低限クリアするべき基準」です。
地震発生時に、ただちに住宅が全壊するのを防ぐための基準で、住宅が全壊・破損しないことではなく、住民の十分な避難時間を確保することで、命を守ることを目的としています。
耐震基準は、これまで何度も改正されてきました。
耐震基準 | 期間 | 概要 |
---|---|---|
旧耐震基準 | 1950年〜1981年5月末 | ・1950年に耐震基準が制定 ・1978年に発生した宮城県沖地震の被害を受け改正 |
新耐震基準 | 1981年6月〜2000年5月末 | ・1981年6月1日に新耐震基準が制定 ・1995年に発生した阪神・淡路大震災の被害を受け改正 |
現行の耐震基準(2000年基準) | 2000年6月〜 | ・2000年6月1日に制定 ・木造住宅の耐震基準を強化 |
旧耐震基準・新耐震基準の違いは、以下のとおりです。
耐震基準 | 概要 |
---|---|
旧耐震基準 | ・震度5程度の地震に耐えられる ・震度5以上の地震では全壊の可能性がある |
新耐震基準 | ・震度6強~7程度の地震でもただちに全壊しない |
能登半島地震では、新耐震基準の住宅も全壊したため、政府や住宅業界の関係者が衝撃を受けました。
耐震等級3の耐震性能|能登半島地クラスの災害に備えるために知っておきたい耐震等級とは
耐震等級とは、2000年4月1日施行された「品確法」に基づく、建物の耐震性能を表す指標です。
東日本大震災・熊本地震などの大地震が発生するたびに耐震性能への意識が変化し、能登半島地震で新耐震基準の住宅が多数全壊した影響もあって、建築基準法上の耐震基準を満たすだけでなく、高い耐震等級を確保することに意識を向ける方が増加しています。
耐震等級1〜3の耐震性能は、以下のとおりです。
耐震等級 | 耐震性能 |
---|---|
1 | ・建築基準法の耐震基準と同レベルの耐震性能 ・震度6強~7相当の地震でも建物がただちに全壊・崩壊しない |
2 | ・耐震等級1の1.25倍の耐震性能 ・震度6強~7相当の1.25倍の地震でも建物がただちに全壊・崩壊しない ・学校や公共施設が満たさなければならない基準 |
3 | ・等級1の1.5倍の耐震性能 ・度6強~7相当の1.5倍の地震でも建物がただちに全壊・崩壊しない ・警察署や消防署が満たさなければならない基準 |
耐震等級3の耐震性能は非常に高く、2016年に発生した最大震度7の熊本地震においても、耐震等級3に該当する木造住宅には大きな損傷は見られなかったというデータがあります。
現在は、耐震等級をベースに設計・施工を実施する施工業者が増加し、標準仕様で耐震等級3を提供する施工業者もあります。
耐震等級3の住宅新築を依頼する施工業者の選び方を、こちらの記事で確認できます。
>標準仕様で耐震等級3のハウスメーカーが増加中|ハウスメーカーの選び方、地震に強い家のつくり方
福井・石川で耐震性能の高い戸建てをご希望の方は、ノークホームズへお問い合わせください。
大地震に負けない耐震等級3の住宅を、標準仕様で提供しています。
住宅の耐震等級に関するQ&A
最後に、住宅の耐震等級についてノークホームズがよくいただく質問と回答を紹介します。
耐震等級3の住宅は大地震に何回耐えられますか?
2016年の熊本地震では最大震度7の揺れが2回発生していますが、耐震等級3の住宅は大きな被害報告がありません。
このことから「耐震等級3の住宅は大地震に複数回耐えられる」と想定できますが、具体的な回数などは公表されていません。
地盤・周辺住宅の状況など、全壊に至る条件はさまざまなので、大地震に耐えられる具体的な回数は、住宅1軒ごとに異なると考えておきましょう。
「耐震等級3」「耐震等級3相当」の違いは?
「耐震等級3相当」は、専門機関から正式に耐震等級3を認定されていません。
耐震等級3を証明するためには、住宅性能評価機関による審査を受け、証明書を取得する必要があります。
耐震等級が高い家を建てるメリット・デメリットを知りたい
耐震等級が高い家を建てる主なメリットは、以下のとおりです。
- 複数回の大地震に耐えられる
- 住宅ローンの金利優遇など、優遇制度を利用できる
- 地震保険料が安くなる
一方、耐震等級が高い住宅には、以下のようなデメリットもあります。
- 建築コストが高額
- 希望どおりの間取りにできない可能性がある
こちらの記事で、耐震等級3の必要性を確認できます。
>「耐震等級3」で後悔する理由|耐震等級3の必要性や取得方法・費用、メリット・デメリットなど解説
まとめ
マイホーム検討中の方に知っておいていただきたい耐震等級3の耐震性能、過去に発生した大地震の被害などを解説してきました。
現行の建築基準法上の耐震基準を満たしている住宅でも、築年数が古く劣化している場合には、能登半島地震のような大地震に耐えられない可能性があります。
また耐震等級3であっても、土地の地盤が弱い場合には、液状化現象などの被害を受けるケースがあります。
今回紹介した情報を参考に、地盤の強度を確保したうえで十分な耐震性能を持つ住宅を建築することを検討していただけると幸いです。